IT用語を超やさしく理解する
分散・標準偏差
別名: 分散 / 標準偏差 / 偏差 / variance / standard deviation
先に知っておくと分かりやすいことば(1語)
必要なら先に確認できます。知っていることばは、そのまま読み進めて大丈夫です。
- 代表値平均値・中央値・最頻値の求め方と、外れ値やデータの尺度に応じた代表値の使い分けを初心者向けに説明します。
30秒で思い出す
分散と標準偏差は、データが平均のまわりにどれくらい散らばっているかを表す値です。
- 偏差: 各データ − 平均値
- 分散: 偏差を2乗して平均した値
- 標準偏差: 分散の平方根
標準偏差が小さいほど平均の近くに集まり、大きいほど広く散らばっていると考えられます。
超やさしく理解
平均値が同じでも、データの散らばり方は違うことがあります。
たとえば2つのシステムの処理時間がどちらも平均100 msだったとしても、
A: 99, 100, 100, 101
B: 50, 80, 120, 150
では、Aの方が100 ms付近に集まっています。
平均値だけではこの違いを表しにくいため、分散や標準偏差を使います。
偏差
偏差は、各データが平均値からどれだけ離れているかを表します。
データが、
2, 2, 4, 4
なら平均値は3です。
各データの偏差は、
2 - 3 = -1
2 - 3 = -1
4 - 3 = 1
4 - 3 = 1
です。
偏差を見ると、平均より小さい値はマイナス、大きい値はプラスになります。
偏差をそのまま平均できない理由
偏差をそのまま足すと、
-1 + -1 + 1 + 1 = 0
となります。
平均から下に離れた分と上に離れた分が打ち消し合うためです。
そこで、偏差を2乗してすべて正の値にしてから平均します。
分散
このKnowledgeではまず、与えられたデータ全体のばらつきを求める基本として、
偏差の2乗の平均
を分散として扱います。
先ほどのデータでは、
偏差: -1, -1, 1, 1
偏差の2乗: 1, 1, 1, 1
なので、
分散 = (1 + 1 + 1 + 1) / 4
= 1
です。
分散が大きいほど、平均から大きく離れた値が多いことを表します。
なぜ2乗する?
偏差を2乗すると、
- マイナスとプラスが打ち消し合わない
- 大きく離れた値をより強く反映する
という特徴があります。
ただし、元のデータがmsなら分散の単位はms²のようになり、元の値と直接比べにくくなります。
そこで標準偏差を使います。
標準偏差
標準偏差は、分散の平方根です。
分散が1なら、
標準偏差 = √1 = 1
です。
平方根を取ることで、元のデータと同じ単位に戻ります。
処理時間がmsなら、標準偏差もmsとして考えられます。
標準偏差が小さいとは?
標準偏差が小さいほど、データは平均値の近くに集まっています。
たとえば、
- システムA: 平均100 ms、標準偏差2 ms
- システムB: 平均100 ms、標準偏差20 ms
なら、Aの方が毎回の処理時間が100 ms付近に集まりやすく、Bの方がばらつきが大きいと読めます。
平均値と標準偏差はセットで見る
平均値だけでは、中心しか分かりません。
標準偏差を合わせて見ると、
- 中心はどこか
- どれくらい散らばっているか
を同時に把握できます。
同じ平均値でも、標準偏差が違えばデータの特徴は異なります。
分散と標準偏差の違い
分散
偏差を2乗して平均した値です。
計算上扱いやすく、統計の多くの式で使われます。
標準偏差
分散の平方根です。
元のデータと同じ単位になるため、実際の値と比較しやすい特徴があります。
母分散と標本分散
統計では、目的によって分散の計算方法が異なることがあります。
このKnowledgeでは、まず与えられたデータ全体そのもののばらつきを求める基本として、偏差平方和をデータ数で割る方法を扱います。
一方、標本から母集団の分散を不偏に推定するときは、偏差平方和を n - 1 で割る不偏分散など、目的に応じて別の扱いがあります。
問題では、どの定義・目的で分散を求めているかを確認することが重要です。
歪度・尖度との関係
分布の形を見る指標として、歪度や尖度もあります。
- 歪度: 分布が左右どちらかへどの程度偏っているかを見る考え方
- 尖度: 分布の形の鋭さや裾の特徴を見る考え方
このKnowledgeでは位置付けを知るまでとし、詳細な式や計算は扱いません。
分散・標準偏差は主に広がりの大きさを表す指標として理解します。
どこで使う?
ITでは、平均だけでなく安定性も重要です。
例:
- API応答時間
- ネットワーク遅延
- CPU使用率
- バッチ処理時間
- 障害復旧時間
平均応答時間が同じでも、標準偏差が大きいシステムは、速いときと遅いときの差が大きい可能性があります。
よくある勘違い
標準偏差が大きいほど性能が良い?
違います。
標準偏差は性能の良し悪しそのものではなく、ばらつきの大きさを表します。
目的によって小さい方が望ましい場合もあれば、単純に優劣を決められない場合もあります。
分散と標準偏差は同じ単位?
違います。
分散は元の単位を2乗した単位、標準偏差は元と同じ単位です。
標準偏差が0ならどうなる?
すべてのデータが同じ値なら、平均との差がすべて0なので分散も標準偏差も0です。
平均値が同じなら分布も同じ?
違います。
平均値が同じでも、標準偏差が異なれば散らばり方が違います。
このKnowledgeで扱わないこと
ここでは、偏差・分散・標準偏差の基本計算と読み取りを扱います。
次は後続Knowledgeへ分けます。
- 相関係数
- 回帰分析
- 推定
- 仮説検定
- 分散の推定理論
- 高度な歪度 / 尖度の計算
ここまで分かればOK
- 偏差を求められる
- 偏差をそのまま平均できない理由を説明できる
- 分散を基本的なデータから計算できる
- 標準偏差が分散の平方根だと説明できる
- 同じ平均値のデータを標準偏差で比較できる
- 標準偏差が元のデータと同じ単位になることを理解できる
資格との関係
基本情報技術者試験
- シラバス
- Ver.9.2
- 必要な理解
- 問題で応用できる
- 重要度
- 高
- 分野
- テクノロジ
関連するIT用語
次に読む
理解できたか確認しよう
答えを選んで、なぜそうなるのかまで確認できます。
確認問題 1
分散と標準偏差を求める
4件のデータが「2, 2, 4, 4」です。この4件全体のばらつきを、偏差平方の平均を分散として求めます。
分散と標準偏差の組合せとして正しいものはどれですか?
確認問題 2
標準偏差から応答時間の安定性を比べる
2つのAPIは平均応答時間がどちらも100 msです。API Aの標準偏差は2 ms、API Bの標準偏差は20 msでした。
応答時間が平均100 msの近くにより集まっていると考えられるのはどちらですか?